留学体験記

留学体験記

海外留学報告

Mayo Clinic 江戸川 祥 子(平成 18 年卒)

早いもので、こちらに来てから 1 年半が経ちました。この 1 年半を通して研究してきた内容 は主に過敏性腸症候群(IBS)に関するものです。日本でもリナクロチドが保険収載されて初 めて便秘型 IBS(IBS-C)が脚光を浴びているようですが、慢性便秘症と IBS-C の違いが分か らない、IBS-C だけが保険病名だと使いにくいとの声が多く慢性便秘症に適応が拡大されると 聞いています。こちらでは、医療費が元々高いのもあって単なる慢性便秘症で病院にくる人は まずいませんが、その分、腹部の膨満感や痛みを伴う便秘型の IBS-C 患者は数多く診断され、 その発生メカニズムや治療に関する研究も盛んに行われています。殆どの日本からの IBS の研 究は、サブタイプに分けられて研究されていることは無く、関心の低さから、多くの IBS-C 症 例が不定愁訴の多い慢性便秘症患者カテゴリーに埋もれているのでは無いかと推測しています。 IBS-C 患者は、他の IBS サブタイプの患者と異なり、腸粘膜透過性は亢進しておらず、健常人 と差が無かったという報告を最近しました(Am J Gastroenterol, 2017)が、全体としてみる と差が無い中で、非常に透過性が高い群があり、その群に属する患者は有意に重症度が高いと いうことを見出しました。現在そのメカニズムを大腸癌細胞株を使って研究しているところで す。ラボで扱っているもう一つの大きなテーマはキャンピロバクター腸炎後の post-infectious IBS(PI-IBS)についてです。日本と異なり、こちらでは保健所のような所がキャンピロバク ター腸炎患者が発生した場合に、便の保存、菌の保存・特定、その後の追跡調査などを行って おり、その調査結果から PI-IBS に罹患しやすいリスクファクターなどが分かります。現在そ の保存されたキャンピロバクター自体がどのような毒性があり、感染時にどのような影響を及 ぼすか、また、感染時の生体の反応が IBS を発症する要因になっているかを研究しています。 PI-IBS の最適な動物モデルが存在しないこと(通常のマウスに与えても感染せず、腸内細菌を ヒト化したり免疫機能を弱めた場合は感染するが、その後に菌が排除されずに住みつく)及び、 細胞と違ってキャンピロバクターは嫌気性で、生育条件が異なるため in vitro の実験も難しい という様々なハードルが有りますが、少しづつ前進しているところです。こちらにいるのもあ と約半年ですが、帰国後に面白い研究報告が出来るように頑張ってやっていきたいと思います。


国立がん研究センター中央病院に留学して

宮 本 敬 大(平成 21 年卒)

昨年度から国立がん研究センター中央病院 消化管内科にがん専門修練医(チーフレジデン ト)として留学させていただいております宮本敬大です。 昨年度はがんセンターの中でも入院患者の最も多い消化管内科の病棟業務を回すべく、ひた すら病棟を駆け回っており、消化管がんの入院患者に限って言えば、おそらく昨年度は日本で も 5 本の指に入るくらいの症例数を見たのでは無いか、と勝手に思っています。 本年度は一緒にがんセンターで研修をされていた山口先生が大阪医大に帰られ寂しい限りで す。そんな感傷に浸かっている暇も無く、自分も 5 月からは臨床を離れ中央病院内にある研究 所で研鑽を積むこととなり、分子細胞治療研究分野 青木一教先生が分野長を務める研究グル ープで勉強させてもらう事となりました。青木先生のグループではがん組織内でのがん細胞・ 間質細胞・免疫細胞間の分子ネットワーク解析に基づき、免疫微小環境の分子背景などを研究 されておられます。今、PD-1/PD-L1 といったがんの免疫学的寛容をもたらす分子群に対する 抗体薬が注目を集めていますが、5 年後 10 年後のがん治療を見据えて、その新たな標的となる 分子の研究や、その臨床応用を目指し日々研究を行っています。今まで使ったことのない Cell line も用いたベンチでの研究や、腫瘍検体を用いた免疫染色など研究所でも貴重で興味深い経 験をさせていただいております。 残り少ない研修期間ですが、何としても結果を残してがん研究の一助となるような論文を作 成したいと思います。 臨床に研究にと多忙な毎日ですが何者にも代えがたい貴重な経験や研究を行える非常に稀有 な研修ができます。本年度から内視鏡科や肝胆膵内科などを重点的に回れる消化器コースも設 立されましたので、内視鏡治療や抗がん剤などがん治療に興味のある若い先生はぜひ、がんセ ンターで研修することをお勧めします。



留学体験記

国立がん研究センター中央病院

山 口 敏 史(平成 20 年卒)

今年の春、東京の国立がん研究センター中央病院での 3 年間の国内留学を終え、関連病院勤 務も含めると 6 年ぶりに大学病院へ帰ってきました。東京では腫瘍内科としての素養を身につ けるべく、消化器以外にも呼吸器、乳腺、血液、肝胆膵、原発不明癌、肉腫、病理など、まさ に腫瘍漬けの日々を過ごしました。時折、疲れ果てる時期もあったりしましたが、皆様の支え で何とか 3 年間を過ごす事が出来ました。慣れた頃の 3 年目は消化管内科の朴先生の元で海外 発表や多施設共同研究など沢山の経験を積ませて頂きましたが、何より心に残ったのはその追 求する姿勢と惜しみない努力でした。最新のエビデンスに触れ、またはそれらを構築するトッ プランナーの仕事を目の前で見る事が出来た事は本当に素晴らしい糧になっていると思います。 現在は第 2 内科の化学療法班のスタッフとして、働かせて頂いておりますが、「見てきたこと」 を自分で「やってみる」事は天と地ほどの差がある事を痛感する毎日です。糧を自信にするべ く、今後も頑張っていきたいと思います。また、がんセンターでは全国から沢山の若手医師が 集まって、日々自分を試しており Try することの大切さも学べました。若手の間、数年くらい 大学から少し離れて揉まれてみるのも、良い経験、良い出会いがあるので是非オススメします。 最後になりましたが、このような機会を作って頂いた後藤先生、留学前から留学後までお世話 になった樋口教授、会員の先生方に厚く御礼申し上げます。

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