新専門医制度
消化器内科の専門研修(後期臨床研修)プログラムについて
<はじめに>
2015年以降の医師国家試験合格者からは新・内科専門医制度が適応されます。
●現状は…
内科系のサブ領域専門医(消化器内科などの専門医)は、3年間の研修(初期研修2 年間+後期研修1年間)を修了後、内科認定医の試験に合格してから専門医研修に入ります。
●今後は…
内科認定医はなくなります(現行の内科認定医は継続可能です)。内科系の専門医は、 5年間の研修(初期研修2年間+後期研修3年間)を修了した後、新・内科専門医の試験 に合格してから専門医研修に入ります。加えて、後期研修の2年間で内科の全領域にわたる症例報告を作成し提出し、査読の上で受験資格を有すると判定された場合に筆記試 験を受験できる(後期研修3年の後)と変わっていきます。
(下図参照;日本内科学ホームページより抜粋)
よって今後、消化器内科、肝臓内科などの内科系専門医として診療するためには、初期研修から後期研修の期間で幅広く内科疾患を診る必要があります。卒後(医師免許取得後)2年の初期臨床研修は、本学附属病院の卒後臨床研修センターが展開する研修コースでプライマリケアや診療の基本となるプログラムを学んでいただきます。
その後3年の後期研修は専門性も意識した内容となりますが、消化器内科では対象臓器別に原則として、消化管+化学療法、肝臓+胆膵に分かれてローテーションして頂くことになります。もちろん希望に応じた変更は可能です。さらに当科は院外に内科学会指導施設認定を受けた多くの関連病院を有しており、大学と遜色ない医療レベルでの診療を行っております。これらの施設では消化器内科領域はもちろんのこと、内科専門医 取得へ向けた分野に偏らない症例や、大学病院で経験しにくい一般的な症例の蓄積が可 能となっています。以下に大学での週間予定表を示します。各グループの研修プログラ ム詳細につきましては下のリンクをクリックして下さい。
<週間予定表>
● 消化管+化学療法
● 肝臓+胆膵
消化管グループ
胆膵グループ
肝臓グループ
化学療法グループ
■ 消化管グループ
【グループの特徴】
消化管は食道・胃・十二指腸・小腸・大腸が含まれ、消化器臓器の中でも最も範囲が広く、その疾患も多岐に渡ります。当然ながら内科専門医に必要とされる疾患も多く、消化管疾患について理解を深めることは内科専門医取得に向けても非常に有益となります。我々のグループでは、大学病院ならではの最新機器を用いて検査や処置の経験を積むことでより高度で幅広い知識を習得してもらうことを目標としています。さらに我々は、まだ一般的に使われていない新規治療薬や治療法の治験・臨床試験にも取り組んでおり、消化管分野のトピックスについても学ぶことが出来ます。また動物実験モデルを用いた消化管分野の基礎研究も熱心に行っており、興味があればそれらを体験することが可能です。研修の際には原則として指導医が1対1体制で個人の理解度に応じた指導が出来るように配慮していますので安心して下さい。
【研修できる検査・処置・治療など(代表的なもの)】
上部消化管
上部消化管内視鏡、内視鏡的止血術、食道静脈瘤結紮術・硬化術 (EVL/EIS)、内視鏡的ステント留置術、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、食道・胃・十二指腸造影、上部消化管超音波内視鏡、食道内圧検査、24時間インピーダンスpHモニタリングなど
下部消化管
大腸内視鏡、内視鏡的止血術、内視鏡的ステント留置術、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、大腸・小腸造影、下部消化管超音波内視鏡、小腸ダブルバルーン内視鏡、小腸・大腸カプセル内視鏡、イレウス管挿入、炎症性腸疾患に対する集学的治療など
【達成目標】
腹部の理学的所見から緊急性を判断できる
消化管内視鏡検査の挿入・観察ができる
消化管内視鏡を用いた処置を理解し、指導下で遂行できる
レントゲン透視下検査・処置を理解し、指導下で遂行できる
内視鏡画像を読影し、診断ができる
CT、MRI、消化管造影画像を読影し、診断ができる
診断をもとに基本的な治療選択ができる
それぞれの治療法の特徴や注意点を理解できる
各分野のトピックスを理解できる
初診外来を担当し、指導下で外来検査・治療を進めることができる
担当症例をプレゼンテーションし、サマリーを作成する
関連学会で症例報告ができる
■ 胆膵グループ 専攻医の先生研修内容(胆膵)
【グループの特徴】
胆膵は胆道と膵臓が含まれ、消化管よりは範囲が狭いと思われがちですが、消化器疾患の中でも診断や治療が難しい分野です。私たちのグループは内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)と超音波内視鏡検査(EUS)という内視鏡検査による診断・治療を行っており、新しい治療や他では行っていないような治療にも積極的に取り組んでいます。特に診断治療に関してはEUS-FNAによる関連手技が胆膵領域ではトピックスであり、胆道癌や膵癌に対する超音波内視鏡下穿刺生検(EUS-FNAB)、閉塞性黄疸、急性胆嚢炎、仮性膵嚢胞に対するEUSドレナージの症例も毎年増えています。ERCPに関しても慢性膵炎に対する金属ステント留置術という新たな治療法や、治療困難な総胆管結石に対してデジタルスコープ機能を有する新しい胆管鏡(SPY-digital)下のEHL、2次分枝までの閉塞を伴う肝門部胆管閉塞に対して、新たな胆管ステントを駆使した複数本のドレナージにも積極的に挑戦しています。また実験の方向でまた学会活動でも消化器病学会や消化器内視鏡学会総会でのシンポジウムでの発表、アメリカのDDWの発表、及びアメリカ消化器内視鏡学会誌のGastrointestinal Endoscopyやヨーロッパ消化器内視鏡学会誌のEndoscopy、アジア太平洋消化器病学会誌であるJournal of Gastroenterology and Hepatologyなどの英文誌にも多く論文が採択されています。このような結果を求めて日々精進しているグループです。消化器内科(胆膵)を回って来られるのを楽しみにしています。
【研修できる検査・処置・治療など(代表的なもの)】
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的胆管ステント留置術、内視鏡的結石除去術、内視鏡的胆管ドレナージ術、 内視鏡的胆嚢ドレナージ術、Interventional EUS(超音波内視鏡下胆管ドレナ ージ術:EUS-BD、EUS- HGS、超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ術:EUS-GBD、超音 波内視鏡下膵管ドレナージ術:EUS-PD、超音波内視鏡下仮性嚢胞ドレナージ :EUS-CD、超音波内視鏡下膿瘍ドレナージ術:EUS-AD)、経皮経肝胆管ドレナ ージ術(PTCD)、経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTGBD)、経皮的膿瘍ドレナー ジ術(PTAD)など
【達成目標】
腹部の理学的所見から緊急性を判断できる
ERCPスコープである後方斜視鏡の挿入がスムーズにできる
超音波内視鏡(コンベックス型EUS)スコープの挿入ができる
ERCP、EUSを用いた処置を理解し、指導下で遂行できる
内視鏡や透視画像を読影し、診断ができる
CT、MRI、内視鏡透視、超音波画像を読影し、診断ができる
診断をもとに基本的な治療選択ができる
検査後の偶発症(特にERCP後膵炎)を早期に診断ができる
急性膵炎、重症急性膵炎などの診断、治療を指導下に遂行できる
急性膵炎、重症急性膵炎などの診断、治療を指導下に遂行できる
それぞれの治療法の特徴や注意点を理解できる
初診外来を担当し、指導下で外来検査・治療を進めることができる
担当症例をプレゼンテーションし、サマリーを作成する
関連学会で症例報告ができる
■ 肝臓グループ
【肝臓グループの特徴】
肝臓は、体内において最も血流が多い臓器であり、消化に関わるだけでなく、代謝、解毒、蛋白合成等の非常に多くの役割を担い、生体に必要不可欠な臓器です。そのため肝臓内科医が対象とする肝疾患は、単なる消化器疾患に限らず代謝性を含め多岐に渡ります。更にその多くが慢性疾患であることから非常に患者が多く、肝臓専門医は需要が多いです。肝臓学会が、消化器病学会と同じように13しかない内科関連学会に指定されていることからも肝臓専門医の必要性は理解できると思います。大阪医科大学は、肝臓学会認定施設であり、さらには大阪における肝疾患拠点病院に指定されています。ウイルス性肝炎、NASHと言った一般的な疾患から、非常に稀な代謝性疾患まで様々な肝疾患を当院では診察する機会があり、最先端の検査や治療を行っています。我々、肝臓グループとしては以下の3つを重点的に指導させて頂きます。
基本的診断能力の習得 腹部エコーは、その利便性や副作用がないことから消化器疾患を診断する際にまず初めに行う手技であり、さらにエコー下で手術も行うことから、臨床医学において非常に重要な役割を担っています。当院は超音波認定施設であり、施行数が非常に多く、その症例も多岐にわたります。特に大学での肝臓グループは、腹部エコーに関連した手技(造影エコー診断やエコーを使用した肝生検、経皮的ラジオ波焼灼術等)を習得することを目的に指導を行います。また、当院では消化器内科で肝動脈化学塞栓療法を行います。そのことから肝細胞癌に対する治療を総合的に習得することが出来ることも当グループの大きな特徴と考えられます。
消化器疾患(肝疾患)に対する技能の習得 腹部エコーは、その利便性や副作用がないことから消化器疾患を診断する際にまず初めに行う手技であり、さらにエコー下で手術も行うことから、臨床医学において非常に重要な役割を担っています。当院は超音波認定施設であり、施行数が非常に多く、その症例も多岐にわたります。特に大学での肝臓グループは、腹部エコーに関連した手技(造影エコー診断やエコーを使用した肝生検、経皮的ラジオ波焼灼術等)を習得することを目的に指導を行います。また、当院では消化器内科で肝動脈化学塞栓療法を行います。そのことから肝細胞癌に対する治療を総合的に習得することが出来ることも当グループの大きな特徴と考えられます。
肝臓専門医を含めた専門医の取得
消化器病学会、肝臓学会は共に、内科学会の関連学会であり、その専門医を取得してもらうことを肝臓グループは目的としています。肝臓の治療は、現在めまぐるしく変化しており、専門医でないと治療できないことも多くあります。大阪医科大学は、肝臓学会認定施設であり、さらには大阪における肝疾患拠点病院に指定されていることから、様々な疾患を診察する機会があり、そのような環境の元で、専門医を取得してもらうことを目的としています。
【研修できる検査・処置・治療など(代表的なもの)】
腹部エコー、造影エコー、Navigation systemを使用した肝臓エコー、エコー下肝生検、エコー下腫瘍生検、経皮的エタノール注入療法、経皮的ラジオ波焼灼術、肝硬化度測定、腹部血管造影、冠動脈化学塞栓療法、肝動脈動注療法、リザーバー挿入、腹水濃縮還元療法、血漿交換療法など
【達成目標】
肝疾患の理学的所見の取り方
一般腹部エコーを施行し、診断ができる
腹部エコーを使用した特殊な検査(造影エコー、Navigation system等) を理解し、施行できる
E腹部エコーを使用した肝生検、経皮的ラジオ波焼灼術を理解し、指導下で遂行できる
造影CT、EOB-MRIを含めた画像診断ができる
診断をもとに治療を選択できる。
関連学会での症例報告
指導のもと肝臓学会専門医の取得
■ 化学療法グループ
【グループの特徴】
化学療法グループは消化器がんの薬物療法を中心に新規薬剤や希少がんの治療も行っており、がん薬物療法専門医や緩和医療専門医が取得できる全国でも数少ない施設の一つです。3人に1人ががんで命を落とす時代です。世の中か ら強いニーズがあり、様々なキャリアが選択できる分野です。大阪医科大学は厚生労働省よりがん診療連携拠点病院の指定を受けており、当グループでは豊富な症例数のもと各癌腫の標準治療を習得するだけではなく、治験や臨床試験などの最先端の医療についても学んでもらえます。実診療では主治医制ではなくチーム制を採用していますので、朝夕のカンファレンスとチーム回診で入院・外来の治療方針の確認・相談の機会を十分確保しています。臨床試験に力を注いでおり、試験の計画・実施や論文作成、国内・海外での学会発表が出来る様になります。希望者は国立がん研究センターやMDアンダーソンがんセンターなどへの留学も可能で、その後も活躍できる舞台を提供しています。実際に多くのスタッフに留学経験があり、現在も数名が留学中です。
【当グループが研究参加し標準治療となった代表的レジメン】
胃癌SOX(G—SOX試験)、S-1療法(JCOG9912試験)、PTX+RAM療法(RAINBOW試験)、術後Cape+Oxaliplatin療法(治験)、XP+HER(ToGA試験)大腸癌SOX+Bmab療法(SOFT試験)、FOLFIRI+RAM療法(治験)、S-1+Bmab療法(BASIC試験)、Cmab(治験)、Pmab療法(治験)、TAS102療法(治験)、regorafenib療法(治験)食道癌術前FP療法(JCOG9907試験)放射線化学療法(JCOG9906)
参加している主な臨床試験グループ
日本臨床腫瘍グループ(JCOG)、西日本がん研究機構(WJOG)、大阪がん化学療法研究会(OGSG)、日本がん臨床試験研究機構(JACCRO)、その他、重要な臨床試験や新規薬剤治験に多数参加
【達成目標】
腫瘍の病理、病態、発生病因、疫学、症候を理解する
診断、標準治療、緩和支持療法などを理解し習得する
患者とのコミュニケーション・スキルの重要性を理解し習得する
集学的治療の適応を理解しコンサルテーションができる
チーム医療の重要性を理解し遂行する
抗悪性腫瘍薬の臨床薬理について基本的事項を理解する
臨床研究に関わる倫理指針や臨床研究に必要な事項を理解し、指導のもとプロトコールの作成ができる
各分野のトピックスを理解し、治験・臨床試験に参加する
外来入院を担当し、指導下で治療を進めることができる
担当症例をプレゼンテーションし、サマリーを作成する